この論文を一言でまとめると:
1型糖尿病の方は,非糖尿病の方と比較しても死亡率は変わらない状況になりました.
以前の研究では,1型糖尿病の方は,非糖尿病者に比べ死亡率が高いだろうと言われていました.
しかし,SGLT2阻害薬の登場や,長時間安定して作用するインスリン(トレシーバ®),
CGM(Gold®,iPro2®)やFGM(フリースタイルリブレ®)による血糖モニタリング技術の進歩,
CSII(インスリンポンプ)やSAP(血糖モニタリング機能付きのインスリンポンプ)の登場により, 糖尿病の方の血糖コントロールは劇的に改善しています.
今回は,1型糖尿病の方と非糖尿病者の死亡率を血糖コントロール状況に応じ比較した,という論文を紹介します.
Mortality in Type 1 Diabetes in the DCCT/EDIC Versus the General Population
PMID:27411699
〇背景:
- スウェーデンやスコットランドでの報告によると,1型糖尿病患者は,大血管障害や腎障害のリスクが増加し,非糖尿病者と比較し死亡率が高いといわれている.
- 近年,1型糖尿病であっても厳格な血糖コントロールを行えば,合併症や死亡を抑えられることがわかってきた.
- 米国の一般市民と,1型糖尿病患者とで調整死亡率の比較検討を行った.
〇方法:
- DCCT試験に参加した1441名,およびEDIC試験に継続参加した1394名を対象とした.
- 心血管疾患,高血圧症,高コレステロール血症の既往がある患者は除外した.
- DCCTT試験,EDIC試験のデータを用い,全死亡率を米国一般市民の期待死亡率(国立健康統計センター2013年のデータ)と比較した標準化死亡比率(SMR)を計算した.
- 各郡毎のSMRを比較した相対死亡率(RMR)を求めた.
〇結果:
- 全死亡は125名で,全例でのSMRは1.09(95%CI 0.92-1.30) であった.
- 米国一般市民と1型糖尿病患者との死亡率を計算したRMRは,以下のグラフの通りとなった.
文献 図1より引用:
平均HbA1c(横軸)と,非糖尿病者との死亡率比(縦軸)のグラフ.
HbA1cが9を超えると,死亡率は急激に増加する.
〇結論:
- 試験参加者全例での死亡率は,非糖尿病者と同程度であった.
- しかし,平均HbA1c値が高いほど死亡率が上昇し,特に9%を超えると大きく上昇する結果となった.
やっぱり血糖コントロールが良くないと死亡率が上がっちゃうんですね.
この研究の注意点は,「高血圧症,高コレステロール血症がある方」は除外されてることです.なので,これらを含めたうえでの研究も気になるところです.
記載:2020年9月16日