記載:2020年8月29日
この論文をひとことでまとめると:
リブレの目標値は,1型および2型糖尿病患者では70-180mg/dLが推奨され,目標範囲内の時間は70%以上が望まれる.
今日はフリースタイルリブレの血糖目標値についての論文紹介です.
フリースタイルリブレでは,血糖の「目標グルコース範囲(グラフの青い帯部分)」を設定することができます.これはいくつにするのが望ましいのでしょうか?
Clinical Targets for Continuous Glucose Monitoring Data Interpretation: Recommendations From the International Consensus on Time in Range
なお,日本語翻訳版も出ています.↓
(今回の文献はコンセンサスレポートであり,介入試験ではないため,形式が変ですがご容赦ください.)
〇背景:
- 糖尿病合併症予防のためのスタンダードな血糖コントロール目標として,HbA1c7.0%未満が目標ということは広く知られている.
- しかし,HbA1cは血糖の日内変動や,重症低血糖・高血糖を特定することはできない短所がある.
- これに代わる指標として,フリースタイルリブレを用いたTIR(Time in range)が提唱されたが,具体的な管理目標は未だ不明であった.
〇方法:
- 2019年2月に開催された国際糖尿病治療テクノロジー学会において,医師ならびに研究者,糖尿病患者からなるパネルを招集した.
- これまでの文献レビューを踏まえ,各パネルグループからの推奨事項を全体で共有し,投票を行った.
- 至適血糖にあった時間をTIR(Time in range),
高値であった時間をTAR(Time above range)
それより低値であった時間をTBR(Time below range)と定義し,TIRの目標値を検討した.
〇結果:
文献から引用:
図1. 左から:
- 1型糖尿病,2型糖尿病患者は,目標血糖 70-180mg/dL,TIR 70%以上が目標.
- 高齢/ハイリスク患者は,目標血糖 70-180mg/dL ,TIR 50%目標でよい.
- 妊娠1型糖尿病では,目標血糖は63-140mg/dL,TIRは70%以上が推奨される.
- 妊娠糖尿病および妊娠中の2型糖尿病患者では,目標血糖は63-140mg/dL,TIRは可能な限り高くする事が推奨される.
表5. TIRとHbA1cの関係
いくつか報告があるが,TIR 70%がHbA1c 7.0%相当,TIR 50%がHbA1c 8.0%相当である.
〇結論:
- 1型糖尿病,2型糖尿病の方がリブレを使用する場合,
目標グルコース範囲を 70-180mg/dLに設定し,全体の70%以上がその血糖におさまるようにコントロール目標をたてる.
TIRの設定方法は下記事をご参照ください.
現在の血糖コントロール指標はHbA1cが主流ですが,近いうちにTIR(Time in Range)に置き換わるかもしれません.
目標血糖の設定は,必ず主治医と相談のうえ行ってくださいね.