糖尿病患者として20年以上通院している自分が,
「HbA1cが上がってたら行うこと」をまとめてみました.
この1-2カ月で変わったことを思い出す
HbA1cは過去1-2カ月間の血糖コントロール指標です.
そのため,採血した時点の血糖値を反映するわけではなく,先月・先々月の血糖コントロール状況を反映します.
なので,生活習慣が原因とすると,
HbA1cが上がった原因は1-2カ月前にあります.だいたい前回の受診時くらいですね.
自分の場合,以下5点を思いだす事にしています.
・薬の飲み/注射忘れはなかったか
・去年,おととしの同じ月はどうだったか
・習慣として始めたものはあるか
・運動量は変わっているか,体重は増えていないか
・体調を崩していなかったか,ほかの採血の値に変化はないか
薬の飲み/注射忘れはなかったか
頻度としては最も多いと感じます.自分自身,忙しかったり,当直勤務が重なったりすると薬を忘れることがあります.
とくに4種類,5種類それ以上と投与している方は,どうしても飲み忘れが多くなってしまいます.薬剤が増えれば増えるほど,それだけ投薬し忘れが多くなります.
投薬忘れは,医師に不必要に薬剤を増量されてしまったり,低血糖発作にもつながるため危険です.
対策として,曜日ごとに薬を収納できる「服薬カレンダー」はお勧めですが,
仕事世代の方は「内服管理アプリ」がおすすめです.こちらはリマインダー通知もしてくれます.
去年,おととしの同じ月はどうだったか
これまでの研究によると,血糖コントロールは夏(7-9月)に改善し,冬(12-2月)に悪化しやすいことがわかっています.
スポーツやアウトドアの季節は,やっぱり血糖が良くなりやすいです.
逆に,寒くなりクリスマスや年末年始の12月/1月は,血糖が悪くなりやすいです.
また,誕生月も要注意です.
1年以上,治療を続けている方は,去年の値も参考にして「血糖の上がりやすい月や季節」を把握してみましょう.
例えば自分の場合,毎年1月頃にHbA1cが悪くなる傾向がありました.そのため,その前月の12月は多めに運動をしてみる,など対策をとっています.
習慣として始めたものはあるか
特に仕事中などの飲み物,健康食品・サプリメントには注意が必要です.
仕事中や移動中に,何気なく飲んでいる飲み物には注意が必要です.
以前の記事でもご紹介しましたが,「ノンシュガー」と記載があっても,ある程度カロリーを含んでいる場合があります.
1パックの量はわずかでも,常飲してると効果は大きいです.
塵も積もれば山となる.
自分はいちど体重が大きく増えてしまった時があり,原因はノンシュガーのカフェラテで,やめたら元に戻りました.特に乳製品は体重を増やしやすいので注意しています.
また,健康食品やサプリメントの場合,ハチミツや水あめ,黒糖を含んでることがあり注意が必要です.
運動量は変わっているか,体重は増えていないか
運動量が低下している場合や,体重が増えている場合,「インスリン抵抗性」が上昇し,血糖値が上昇します.
「インスリン抵抗性」は,「インスリンの効きやすさ」とも言い換えられます.
同じインスリンの量でも,インスリン抵抗性が高いと血糖が下がりにくく,インスリン抵抗性が低いと血糖が下がりやすいです.
運動量は特に影響します.
通勤経路が変わったり,通勤手段が変わったり(電車→車)していませんか?
職場の勤務形態が変わっていません?(外回り中心→デスクワーク)
自分の患者さんで,
「会社駐車場で工事があり,徒歩10分の場所に駐車場が移転した.
そしたら,毎日歩数が5000歩ほど増え,血糖コントロールがとっても良くなった」
という方もいらっしゃいます.
なお,歩数の目標はだいたい7,000歩/日~10,000歩/日が適切と言われています.
特にスマートフォンアプリでは,月ごとの比較ができるため,一目瞭然ですのでお勧めです.
なお,世界保健機関(WHO)やアメリカ合衆国保健福祉省(HSHHS)は,週に合計150分以上の有酸素運動を推奨しています.
補足ですが,ここでいう「インスリン」は,
- 「すい臓から分泌される自前のインスリン」と,
- 「注射で投与するインスリン」
両方を指します.
そのため,運動量による血糖変動は,
1型糖尿病の方でも,2型糖尿病の方でも同じように意識が必要です.
体調を崩していなかったか,ほかの採血の値に変化はないか
特に生活習慣が変わらず,血糖上昇の要因が何もない場合は,何か別の病気が起きていないかを考える必要があります.
風邪など感染症は一番頻度が高い血糖上昇の要因です.普段からの体調管理に気を付ける必要があります.また,貧血,肝機能障害,腎障害,ガンの発症などでもHbA1c値に変化が起きることがあります.
ステロイド製剤や降圧薬の一部(β遮断薬など)が血糖を上げることがありますが,
これらの薬剤は,治療の必要性があり開始されていることがほとんどなので,自己判断せず主治医に相談してみましょう.
糖尿病の方における血糖値やHbA1cは,体の調子を表すバロメーターでもあります.
急激な変化があった場合は,何か変わった事がなかったか?と考える癖がつけば,セルフコントロールにつながりやすいです.
記載:2020年9月13日
更新:2020年9月13日
2020年9月17日(一部デザイン崩れ修正)
2020年10月3日(記事を一本化)