糖尿病医の糖尿病日記

糖尿病(MODY3)の糖尿病医が糖尿病の記事を書きます.

センセイ,最近の注射針は刺した気がしねぇんだよ!

現行の注射針はどんどん細く短くなっています.現行,最も細いものは日本の町工場で開発されたものです.

 

本日はインスリンの注射針,ナノパスニードルについての記事になります.

 

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つい数十年前までは,インスリンは今のペンタイプではなく,薬瓶に入っているタイプでした.自分で注射器を使って吸い出して,今よりずっと太い針を使って注射してました.

インスリンを使っている方のお腹は,常に生傷・青あざだらけだったようです.

現行で最も細い注射針を開発したのは,墨田区の小さな町工場

 テルモ株式会社「ナノパスニードル」紹介ページより

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吉岡成人先生のウェブサイトより

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そのような状況下で,インスリンはじめ「痛くない注射針」の開発はすすみ,
現在(2020年9月時点)最も細い注射針は,テルモ株式会社の「ナノパスニードル®」という注射針になります.
針の太さを表すゲージ数は34G(0.18mm)と,注射針にしてはかなりの細さです.

 

皮膚の痛みを感じる「痛点」は,1ミリ平方あたり2個存在していると言われています.つまり,針が細ければ細いほど,「痛点」を回避できる可能性があります.

簡単に言うと,針が細いほど,注射時の痛みが減ります.(全く痛くないときもあります.)


この注射針は,テルモ株式会社と岡野工業が共同開発しました.

岡野工業..
聞き慣れない名前ですが,東京都墨田区にあった小さな町工場です.
(2018年に岡野社長が85歳,後継人もいない・・・との事で廃業されました.残念です..)

世界に誇る\"痛くない注射針\"、あの「岡野工業」も!大学全入時代で中小企業の廃業続々 【ABEMA TIMES】より引用


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従業員3名で年商8億円!

 

これまでの注射針は,長らく「金属管を斜めにカットする」加工が施されていましたが,ステンレスの板金を限界まで薄く加工し,それをクルリと巻くことで管状にする逆転の発想で,最も細い針の開発に成功しました.

 

 テルモ株式会社「ナノパスニードル」紹介ページより

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針先は日本刀のような構造になっています.
かっこいい.

 

ちなみに,世界大手のBD社が製造している注射針の「マイクロファイン®」は,ナノパスよりも太い32G(0.23mm)です.

下町の小さい町工場が,世界でもリードするような技術を持っていたなんて,「下町ロケット」感があって夢が膨らみますね!!

 

ちなみに,現行で一番太いタイプは「ペンニードル®」の30G(径0.30mm)タイプです.
ながらく太く長い注射針でインスリンを使っている糖尿病の方に,良かれと思って細いのに変更したら,逆に刺した気がしないと怒られたことがありました(笑)

 

記載:2020年9月17日