糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬が世界的に品薄になり,問題になっています.
GLP-1受容体作動薬は,2型糖尿病の治療薬です.強力な血糖降下作用に加えて,食欲を抑制する効果があることから,大きな体重減少効果が認められています.
また,最近の研究でSGLT2阻害薬と同様に心臓・腎臓の保護作用をもつこともわかり,まさに次世代の糖尿病薬として注目を浴びています.本邦では2010年からビクトーザ®という毎日注射タイプのものが発売されて以降,週1回でよいもの,さらに体重減少効果が高いもの,経口薬のものが次々出現し販売・使用されています.
GLP-1受容体作動薬は,2型糖尿病の治療薬として日本では認可されていますが,海外においては肥満症に対する治療薬としても使用されており,多くの治験および開発が行われています.
しかしながら,その減量効果が注目されるに従って,いわゆる"GLP-1ダイエット"という名前で美容目的に適応外投与されることが問題となってきました.
糖尿病ではない方が美容痩身目的にGLP-1作動薬を使用した場合,
また,「ネットだけで処方」をうたうGLP-1ダイエットクリニックの多くは,適切な医師の管理を行っていない現状があります.例えば,胃腸障害や低血糖症などの副作用が生じても,近隣の医療機関へ受診するよう促すだけというクリニックも散見されます.
というか,実際に救急外来で勤務していても,「ネットで購入して,ただ薬だけが送られてきたけど打ったら調子が悪くなった」という方,わりといらっしゃいます.
正しく使用していれば,本来は効果的な薬なのに,商業目的で乱用されてしまい,きちんとしたGLP-1ダイエットを行っている業界ともどもの全体的なイメージダウンにも繋がっているというのが事実です.
2022年3月には日本医師会からの声明が話題となりました.
やっとメスが入るのかな。
— おだQ🧬💉 (@OdaQ_DM) 2022年3月2日
日医・今村副会長 オンライン診療でのGLP-1ダイエット「看過できない」 健康被害と流通実態の把握を https://t.co/2zcyeOPpED pic.twitter.com/elo6hDurwb
そして現在,ほとんどのGLP-1受容体作動薬の在庫が逼迫しており,本来2型糖尿病の方が使用できない状況が問題となっています.
きっかけは新型コロナウイルス感染症による薬剤流通障害なのですが,2023年6月にデュアルアゴニストであるマンジャロ®が発売されてから,その傾向が顕著となりました.
マンジャロについての記事はこちら↓
マンジャロの在庫逼迫を受けて,その他のGLP-1受容体作動薬も雪崩式に在庫が逼迫してしまう状況となりました.厚生労働省からも在庫逼迫に関する声明が出ています.
これをうけて,少なくとも私が診察している糖尿病の方でも,多くの方が余儀なく薬剤変更を強いられました.せっかく血糖のマネジメントが上手くいっていたのに,変更することで悪化してしまった方もいらっしゃいます.
いっぽう,在庫逼迫して流通していないはずのGLP-1受容体作動薬の名前をGoogle検索すると,依然として美容痩身クリニックで販売が継続されているのが現状ではあります.
メーカーの情報では「年内には解決の見込み」とのことですが,早期に解決するとよいですね.
適応外使用,ダメゼッタイ!!.