1型糖尿病を発症した方で,治療半年~1年め辺りにインスリンの必要量が下がる期間があります.これをハネムーンピリオド(ハネムーン期)と言います.
糖尿病を発症したときは,血糖が大きく上昇します.
血糖が高すぎると,インスリンを分泌する「すい臓」からインスリンが出にくくなったり,そのインスリンが効きにくくなったりします.これを「糖毒性」といいます.
簡単にいうと,血糖が高いのが続くと,なかなか下がりにくくなります.
んで,インスリン注射によって正常近くまで下げますと,その「糖毒性」がとれます.
同じインスリン量でも,血糖が高かった時より血糖が下がりやすくなります.
1型糖尿病を発症した方をみていると,だいたい1~2週間入院していただいた後,退院の時は1日30単位くらい必要だった方でも,その後数か月どんどんインスリンの必要数が下がっていき,場合によっては数単位しか必要なくなる方がいらっしゃいます.
その後,多くの場合は少しずつ自前のインスリン量が低下して,最終的に発症から2年ぐらい経過してから,入院した時と同じ~やや多めくらいのインスリン量で安定するというパターンが多いです.
この期間をハネムーン・ピリオドと言います.糖毒性がとれてインスリンの必要量が一時的に少なくなる期間ですね.
・・・と,少なくともどの糖尿病の教科書にも記載されています.
自分も最近まで,教科書に書いている通りに理解しているつもりでした.
ところが,ある日こんなツイートを目にしました.
「1型糖尿病と言われて入院して,退院してきた.
血糖が上がるのが怖くて,ご飯を食べることができない.
いつものように食事するのが怖い.
食事量が減ると,インスリンも少なくて済む.」
プロフィールを見ると,最近1型糖尿病と診断されて,退院してすぐの方のようです.過去のタイムラインをみると,他にも同様の記載でいっぱいでした.
(本当はリプライするのがよかったのですが,ためらってしまいました.)
自分は専門家ではないですが,摂食障害,いわゆる拒食症に近い状況にみえました.
・・・と,ここでふと思ったことが,
「ハネムーン期間は,本当は退院後の食事制限が原因ではないのか?」
ということです.
東京女子医科大学糖尿病センターでのアンケート調査の報告によると,1型糖尿病の方のうち13.5%に摂食障害(いわゆる拒食症)がみられるようです.この報告をみると,とくに女性,それも真面目な方に発症しやすいとのことですが,これまで自分が経験したハネムーン期間があった方は,皆そのような真面目な方だった気がします.
退院後はなかなか慣れなかった食事とインスリンの調整も,次第に慣れてきて,次第に安心して食事を行うことができる.その期間がまさにハネムーン期間の終わりとされる発症1年後あたりなのではないかな,と思ってしまったりなんだり.
もちろん教科書に記載している「ハネムーン期間」を否定するわけではありませんが,糖尿病治療,本当に奥が深いと感じました.