SGLT2阻害薬内服中の1型糖尿病患者がインスリンをやめるとどうなるか

この演題をひとことでまとめると:

SGLT2阻害薬内服中にインスリン枯渇状態になった場合,内服していない場合に比べ,ケトン体の増加速度が著明に上昇する一方,血糖上昇は目立たない.

 

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 これまで,1型糖尿病の方への治療はインスリン注射のみが選択肢でしたが,
海外でのさまざまな研究の結果,1型糖尿病患者においても有用であることが示され,2018年12月以降に一部のSGLT2阻害薬(スーグラ®,フォシーガ®)の使用ができるようになりました.

しかしながら,一部の患者さんにおいて「正常血糖ケトアシドーシス」という副作用が出現することが報告されてきました.
体内のインスリンが欠乏状態になる「糖尿病性ケトアシドーシス」の状態なのに,SGLT2阻害薬の効果で血糖は正常なので発見が遅れてしまうことが問題になっています.

ほとんどがインスリンを中断してしまった1型糖尿病の方に発症します.

なお,インスリン投与・シックデイの管理がしっかりできていれば,この副作用はほぼ起きないです.

 

前置きが長くなりましたが,演題の話に移ります. 

Acid–Base Changes during Diabetic Ketoacidosis (DKA) in T1DM with and without SGLT2 Inhibitor (SGLT2i)

diabetes.diabetesjournals.org

 (ADA2020でのプレゼンテーションのためAbstractのみになります)

 

○目的:

  • 1型糖尿病患者において,インスリン枯渇に伴うケトアシドーシス進行と,SGLT2阻害薬の影響を明らかにする.

○方法:

  • 持続皮下インスリン注入療法(以下CSII)中の1型糖尿病患者16人(全員男性)を対象とした.
  • SGLT2内服群,非内服群の2群に分類.
  • SGLT2内服群,非内服群いずれも試験前に7日間の様子観察を行った.
  • 7日目にCSIIを中止し,ケトアシドーシス発症後,インスリンを再開.(具体的な中止基準は記載なし.)
  • その間,1時間ごとに採血を行い,血糖値,ケトン体,グルカゴン,phをモニターした.

○結果:

(上記Abstract, 図より引用.)

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いずれも緑線はSGLT2なし,赤線はSGLT2あり.
A:インスリン中止後の血糖推移.
B:インスリン中止後のケトン体(βヒドロキシ酪酸)推移.

  • 両群を比較検討すると,SGLT2あり群にて,血中ケトン体の上昇が著しい結果となった.
  • 反対に,血糖に関してはSGLT2あり群で上昇が抑えられていた.

○結論:

  • ケトアシドーシスが進行していても,SGLT2阻害薬により血糖値は正常域に留まるため,救急診療にてケトアシドーシスの診断を妨げる可能性がある.

 

SGLT2阻害薬の内服中の1型糖尿病の方では,数時間のインスリン欠乏でケトアシドーシスの危険性があります.結局,シックデイの対応が一番重要です.
いろいろな意味で日本ではできないStudyだなぁ,と思いました.

 

〇記載:2020年9月12日

〇更新:2020年9月17日