糖尿病医の糖尿病日記

糖尿病(MODY3)の糖尿病医が糖尿病の記事を書きます.

近年注目されているAGE(終末糖化物質)のおはなし

近年,糖尿病合併症の原因として,AGE(エージーイー,終末糖化物質) が注目されています.

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pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は上記文献を参考に作成しております.

 

糖尿病合併症の原因,AGE(エージーイー)

AGEは"Advanced Glycation End-Products"の略で,日本語で終末糖化物質といいます.

 

糖尿病の合併症は様々ですが,基本的にどの合併症も,血管が痛むことが原因で発症します.

これまで,「血糖が高いこと」で,なぜ「血管が痛むのか」というのは,あまりよくわかっていませんでした.これをうまく説明できる可能性があるのが,AGEsという物質です.

 

血液中には,食べ物の栄養や,ホルモンや,酵素など,さまざまな種類のタンパク質がフワフワ漂っています.
ふだんは良い働きをするやつでも,血液中の過剰な糖分がひっつくことで,血管を傷つける悪者に変化します.

この悪者の総称がAGEです.

(上記文献 Table1より引用)

 

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現在のところ14種類ほどがAGEとして報告されています.

 

 

AGEは血管の内側を傷つけたり,血の塊(血栓)をつくりやすくします.

その結果,糖尿病の合併症として,心臓や脳の血管が詰まったり(心筋梗塞,脳梗塞),目の細かい血管が破れたり(網膜症)します.

また,糖尿病の方に起こりやすい,白内障や骨粗しょう症もAGEが原因といわれています.

AGEはどういった要因で増えるのか?

  • 長い間,血糖が高い状態で放置する.
    AGEは「血糖値」×「時間」で増加すると言われています.
    つまり,診断されてから,なるべく早期に積極的に血糖を下げれば,その後に合併症を発症する可能性が低くなります.この現象はAGEが提唱される前から,「レガシー効果」とよばれており認知されていました.
    逆に,漫然と血糖が高い状態を何年も放置しているとAGEが蓄積します.
  • 肉類,バターの摂取

  • 揚げ物,油で炒めた食べ物の摂取
    逆に,茹で/蒸した料理はAGEが増えにくいといわれています.

 

AGEを減らすためには?

これまでの研究では,以下がAGEを低下させるといわれています.

  • なるべく早く血糖値を目標値へ下げる.
    筆者の場合,HbA1cが高い方は,発症早期からインスリンをなるべく早期から使って血糖値を正常近くまで持っていき,その後にインスリンをやめて飲み薬へ変更する治療を推奨しています.逆に,インスリンを避けて,飲み薬で漫然と高血糖状態を継続させるほうが害です.
    また,糖尿病治療薬のひとつのメトホルミンはAGEを低下させるといわれています.
  • LDLコレステロールを下げる.
    血糖だけに目が行きがちですが,コレステロールを下げるのも重要です.
  • 禁煙する.
  • ビタミンDを接種する.
  • 運動を行う.
    運動によってインスリン抵抗性を下げ,結果的に血糖を下げたり,抗酸化作用などでAGEが減少します.

 

糖尿病治療の目標は,糖尿病合併症を起こさない(進めない)ことです.もしAGEを減らす新薬が出て,それで実際に糖尿病合併症が減れば,糖尿病の治療がまた一歩前進することになりますね.

記載:2020年9月8日