最近は糖尿病の治療薬がめざましく発展しており,世界的にも糖尿病の合併症発症率は減り続けています.
いっぽうで,新しい糖尿病治療薬は高価な傾向があり,日々の通院費を押し上げています.
このブログを読んでくださる方には,糖尿病のために通院をされている方も多いと思います.外来通院にかかる費用はどれくらいでしょうか?
これは私個人の話ですが,子供の頃の治療は採血と内服処方のみ.ただし,それ以上できることは少なく,あとは生活習慣を調整して対応,だめならインスリン.という感じで言われていました.そんなわけで通院費は月に数千円程度で推移していました.
そして最近はというと,超速効型インスリンやGLP-1受容体作動薬,フリースタイルリブレなどの新顔が登場しまして,確かに血糖コントロールは非常に安定し,かつ割りと怠惰にして生活習慣をミスってもなんとかなる(爆)ことが多くなってきたのですが,外来通院にかかる費用は2万円を超えており,わりと高額になりました.
さて,糖尿病治療の現場としてもそのような傾向となっています.
ひと言でまとめると,合併症の治療よりも,合併症の予防にお金をかけるようにしよう!という傾向です.
ひとたび合併症がおきると,その治療には高額な治療費が必要になります.
例えば網膜症がすすんでレーザー治療や硝子体手術が必要になると何十万円もかかりますし,心筋梗塞を発症してカテーテル治療・ステント留置術が必要になると百万円以上もかかることがあります.
また,その後も通院や内服治療を継続しなければなりませんから,さらに出費は続きます.
さて,糖尿病の治療は年々進化しており,合併症はどんどん少なくなっています.糖尿病ネットワークの2014年の時点の調査でも,その減少率は顕著です.
なお,2009年にDPP4阻害薬,2010年にGLP-1受容体作動薬,2014年にSGLT2阻害薬が登場しているので,2010年以降もさらに合併症の発症率は減り続けているものと思われます.
いっぽうで,上記のような新薬は既存薬に比較して高価なのも事実です.
現場の医師としては,なんとしても合併症を起こさないように最善の治療を提供したい気持ちがあるのですが,どうしても新しい薬を使用すると高額になってしまいがちです.
糖尿病ネットワーク調査でも,高額な医療費は通院中断リスクの大きな原因となっているという可能性が指摘されています.せっかくベストな医療を提供したいという気持ちはあっても,患者さんの懐事情を考慮しない治療は結果的には患者さんを不幸にさせてしまいますよね.
とはいえいい時代になったよね.血糖測定器もずいぶん針が細くなったし,スマホでリアルタイムに血糖モニタリングができるなんて,昔じゃ考えられなかったなぁ.
いつか糖尿病が治る時代が来るといいワン.