糖尿病が子に遺伝しないか心配です． 糖尿病は遺伝しますか？というお便りが届いているワン．
糖尿病に関する遺伝的な側面は確かに存在します．
親が糖尿病である場合，そのお子さんが糖尿病になるリスクは通常，高まります．ただし．糖尿病はそのタイプ(病型)により様々な遺伝形式をとり，遺伝子が発症に関係する度合いも異なります．
たとえば1型糖尿病，2型糖尿病は「糖尿病のなりやすさ」だけが遺伝しますが，MODYなど遺伝が直接発症に関係する糖尿病もあります．
なるほど．糖尿病のなりやすさが遺伝するということは，糖尿病の人の子どもが必ず糖尿病を発症するというわけではないワンね．
図：糖尿病における，遺伝と環境素因のイメージ
そうです．1型・2型糖尿病は影響の小さい様々な遺伝要素が関与し，ウイルス感染(1型)や加齢・喫煙・肥満(2型)などの環境因子が組み合わさり発症に至ります．
そのため，実際に糖尿病を発症するかは環境因子に依存します．
たとえば，HLAという遺伝子領域が1 型糖尿病の発症しやすさに関与していることや， TCF7L2, SLC30A8, HHEX, CDKAL1, CDKN2A/B, IGF2BP2, FTOなどの遺伝子変化が，2型糖尿病の発症に関与することなどが明らかにされているんだよ．
リスクとなる遺伝子を多数持っていると，発症しやすいから気をつけたほうがいいという事だワンね．
そうだね．だから，例えば2型糖尿病が多い家系では，発症を避ける，あるいは遅らせるために肥満，喫煙などのリスクを避けること，定期的に健康診断を受けるようにする，などの対策が必要と思います．
記事解説：
・1型糖尿病，2型糖尿病は影響の小さい様々な遺伝要素が関与し，ウイルス感染(1型)や生活習慣(2型)などの環境因子が組み合わさり発症に至ります．そのため，「糖尿病のなりやすさ」は遺伝しますが，実際に発症するかは環境因子に依存します．
・いっぽうで，MODYに代表されるMonogenic diabetesは，病原遺伝子が半分の確率で子に遺伝します．代々続く若年発症の糖尿病患者では，MODYを鑑別に挙げる必要があります．
