人工すい臓の実現は目前?グルカゴン皮下デバイスが開発

インスリンを使っていると、ときに『低血糖ってこわいなあ』と感じること、ありますよね。とくに夜中や外出中の低血糖、もし意識を失ってしまったら……自分ではなにもできなくなってしまう。それが重症低血糖のやっかいなところです。

 

皮下埋め込み式注射パッチ

Implantable device could save diabetes patients from dangerously low blood sugar | MIT News | Massachusetts Institute of Technology

そんな『もしも』に備えて、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームがちょっとすごい装置を開発しました。

なんと、からだの中に『グルカゴン』をためておける、皮下うめこみ型のちいさなデバイスです。

そもそも、グルカゴンって?

すい臓は『インスリン』で血糖を下げ、『グルカゴン』で血糖を上げるという、いわば血糖のバランス役を担ってくれています。血糖が上がりすぎないようにするのがインスリン、逆に下がりすぎないようにするのがグルカゴン。じつはこの二つのホルモンのバランスで、血糖値ってうまく保たれているんですね。

インスリンについては、『インスリンポンプ』や『持続血糖モニター(CGM)』がどんどん進化していて、必要なタイミングで必要な量のインスリンを自動で出してくれる時代になってきました。こうした技術に『グルカゴン』も加われば、まさに『人工すい臓』と呼べるようなしくみになるわけです。

 

じゃあ、いまのグルカゴンってどう使うの?

現在、臨床で使えるグルカゴン製剤には『注射剤』と『点鼻剤』の2種類があります。どちらも低血糖で意識がもうろうとしているときに使うものですが、問題は『自分では使えない』という点。

 

低血糖緊急症の治療薬、点鼻グルカゴン製剤「バクスミー」

注射剤の場合は、まず粉と液体をまぜてから筋肉に注射する必要があり、使い慣れていないと少し手間がかかります。点鼻剤はもう少し簡便ですが、それでも誰かに鼻に噴霧してもらう必要があります。つまり、どちらの方法も『そばに誰かがいてくれる』ことが前提になっているんです。

でも実際は、ひとりでいるときに低血糖になることもあるし、家族やまわりの人も必ずしもすぐに対応できるとは限りませんよね。

だからこそ注目の『うめこみ式グルカゴン』

皮下埋め込み式注射パッチ

Implantable device could save diabetes patients from dangerously low blood sugar | MIT News | Massachusetts Institute of Technology

 

 

今回のデバイスは、たった20ミリほどの小さなもので、皮膚の下にうめこまれる設計。中には乾燥した状態のグルカゴンが入っていて、外からの信号を受けて必要なときにだけ体内へ放出される――そんなしくみです。

想定されているのは、CGMなどの血糖センサーと連動し、血糖値が一定より下がったときに『今だ!』とばかりにグルカゴンが出てくれる流れ。これがもし実現すれば、低血糖の発作を自動で回避できるようになるかもしれません。

いまはまだ動物実験。でも、確実に前へ

もちろん、すぐにヒトに使えるというわけではなく、現在は動物実験の段階。でも、乾燥グルカゴンの安定性や、必要なときだけうまく薬を届けるしくみなど、いろいろな工夫が盛り込まれています。

インスリンにくわえて、グルカゴンも「自動化」できるようになれば、これまでよりずっと安心して過ごせるようになるかもしれませんね。

 

今回の記事で紹介したデバイスの文献はこちらです↓

Krishnan, S.R., O’Keeffe, L., Rudra, A. et al. Emergency delivery of particulate drugs by active ejection using in vivo wireless devices. Nat. Biomed. Eng (2025).

www.nature.com