「糖尿病に関する言葉の見直し」を、もう一度見直す

最近の糖尿病診療では、『アドボカシー活動』という言葉を耳にすることが増えてきました。これは、糖尿病にまつわる誤解や偏見によって生まれる、根拠のない差別をなくそうという取り組みのことです。

 

ただその一方で、言葉の使い方にとても敏感になってしまい、話すこと自体が難しくなっている…そんな空気も感じるようになってきました。

最近では、『糖尿病患者』と言っただけで、『糖尿病をもつ人』と言い直すべきだと注意されたり、『コントロール』や『指導』といった、昔から使われていた言葉すら使いにくい…そんな場面も出てきています。

例えば製薬会社の職員などが顔色をうかがいながらこういった言葉を使用している現状などをみると、患者としても違和感を覚えます。

 

確かに、いまだに医療者からも糖尿病をもつ人に対して不用意な言葉が投げかけられたり、本人の努力不足のように誤って捉えられる構造的な偏見が根強いことは事実です。

『糖尿病は自己管理ができない人の病気』

『甘いものばかり食べていたからこうなった』・・・・

そうした誤解が、じわじわと人を追い込んできたのです。だからこそ、そうした社会の目を少しずつ変えていこうとする『アドボカシー』は、まさに今必要とされているものです。

 

実際、糖尿病診療はこの数十年で大きく進歩しています。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬といった新しい薬。持続血糖モニターや、自動で調整してくれるインスリンポンプのようなデバイス。それらによって、糖尿病をもつ人の暮らしは本当に変わってきました。

けれどその一方で、社会に残る『糖尿病』への目線は、どこか昔のまま止まっているように思います。

『若いのに糖尿病?』『インスリンを使うって、かなり重いんですね?』

そうした言葉が、今もなお日常の中に残っています。

 

糖尿病の治療の目的は『糖尿病のない人と変わらない暮らしを送れるようにすること』です。そして実際に、スティグマ(偏見)は治療意欲や自己管理にも悪影響を与えることが、最近の研究でも明らかになってきました。

大切なのは、単に『この言葉は禁止』と決めてしまうことではなく、『なぜこの言葉を使いたかったのか?』『この言葉を聞いた人はどう感じるか?』という、関係性のなかでの意味づけを考えることかなと思います。