このまえ知り合いが遺伝学的検査を受けたみたいだワン。結果が出るまで1ヶ月近くかかるって言われたみたいだワンが、なんでそんなに時間がかかるワンか?
そもそも技術的に時間がかかる事が多かったり、慎重な解釈が必要になるからだよ。
「遺伝学的検査」は、と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
日常的な健康診断や外来での検査では、採血や尿検査の結果が早ければ当日、遅くても翌日には出るのが一般的です。たとえば肝機能や血糖値、HbA1cの値、炎症反応などの数値がすぐに確認できるのは、「検査=すぐ結果が出るもの」という感覚を私たちに植え付けています。
ところが、遺伝学的検査になると話は一変します。確立された解析系で、早くても2週間程度、場合によっては数ヶ月を要することもざらにあります。遺伝子の検査となると、どうしてこんなに時間がかかるのでしょうか?
そもそも遺伝子解析自体に時間がかかる
遺伝学的検査は、
① まず採血した中からDNAを抽出する
② 多数の配列をチェックする
③ 見つかった配列変化が病気と関係あるかどうかを専門家が評価する
という流れで行われます。
①はそれほど時間がかかりませんが、②③は解析の種類・見つかった遺伝子変化により、かなり振れ幅があります。
遺伝学的検査でおこなう解析の種類は、その病気の種類により様々ですが、多くの場合はパネル検査など複数の遺伝子領域をまとめて解析する手法をとることが多いです。
ここでいう「複数」とは、十数~数十種類であることがほとんどです。
たとえば、がんパネル検査では、がんの原因となりやすい数十〜数百の遺伝子を一度に調べます。ヒトの遺伝子座は20000種類程度と言われているので、実はこれでも必要な部分だけを最低限・効率的に解析しているといったものになります。
また、遺伝子のコード領域すべてを解析する全エクソーム解析(WES)や遺伝子すべてを解析する全ゲノム解析(WGS)ということになりますと、その解析領域はそれぞれ4000万文字、30億文字ぶんと、この中から原因遺伝子を探し当てるのはとても大変な解析になります。(スーパーコンピュータを用いて解析を行います)
「結果の解釈」にもっとも時間がかかる
そして、ここからが最も大変なのですが、見つかった遺伝子変化が病気の原因となっているかの判断がとても重要です。というのも、遺伝子の変化があったとしても、その部分が重要な機能を持つ場合もあったり、大して影響のない部分だったりするんですよね。
場合によっては、データベースに登録されていない遺伝子変化が検出されることも多く、複数の医学論文をサーチしてカンファンレンスを行ったのち総合的な判断が必要になることもあります。
病原性と言えるかは微妙な遺伝子変化だった場合は、病状や家系への共有状況などから総合的に判断されることもあります。
その場合は、数ヶ月~場合によっては半年程度かかることもあります。
「時間がかかる検査」であることを理解しよう
こうした事情から、遺伝学的検査は「明日には結果が出る」ような検査ではないという理解がとても重要です。遺伝学的検査の前に受ける遺伝カウンセリングでもそのような説明がなされることと思います。
結果までに時間はかかるけど、そのぶん丁寧に調べてるワン。
この「待ち時間」こそが、より正確な診断や、治療方針の決定に役立つものです。焦らず構えて、しっかりと検査結果を受け止められるようにしておくと、次の一歩にも落ち着いて進めるのではないかと思います。