インスリンを打つと太る?という迷信

センセイ、インスリン注射をやめようと思うワン。

え!?どうしたの?!

*マージョリーくんは、すい臓がないのでインスリン注射をしているのだ。

最近太っちゃったワン。それで、知り合いの祈祷師に相談したら、インスリンは太るからやめろって言われたワン。

(なぜ祈祷師・・・?)えーと、、すい臓が無いんだから、やめたら命にかかわるよ。

え、そうなんだワンか・・・

「インスリンを打つと太る」というウワサを聞いたことがありますか?

このウワサは半分本当でもあり、誤解でもあるという少しややこしい内容なんです。

インスリンって何をする薬?

インスリンは、「血糖値を下げるホルモン」とよく言われます。結果的に血糖値は下がりますが、実はその間にいろいろな働きがあります。

 

図のように、インスリンは

  • 糖を細胞に取り込ませ、エネルギーとして使用させる
  • 筋肉や脂肪、肝臓にエネルギーを蓄える

役割をしています。つまり、インスリンは「血中の糖がエネルギーとして使われるのを助けるホルモン」なんですね。

 

じゃあ、なんでインスリンで太ることがあるの?太りやすくなるパターンは?

そこでポイントはここからです。

インスリンを打つことで太るのは、大きく分けて以下の3パターンです。

  • もともとインスリンが不足しており、血糖値が上がっていた方が、インスリンを開始したり増やしたパターン。それまで使えなかった糖が体に取り込まれるようになる。

この場合は、「太った」んじゃなくて「健康な状態に戻った」とも言えます。

 

  • インスリンを使っている方で、頻繁に低血糖を引き起こしている場合。

SMBG(指先の穿刺による血糖測定)のみ行っている方や、血糖を全く測定しない方に多いです。
本来必要なインスリン量より多すぎるので、この場合はインスリンを減量すると、体重も血糖マネジメントもよくなることが多いです。

 

  • そもそも摂取カロリーが過剰な場合。

消費しきれないエネルギーが脂肪に置き換わるので、インスリンで血糖値を下げても、脂肪が増えてしまいます。

 

特に最後の「摂取カロリーが多い場合」は、インスリンの効きが悪くなるため、さらに太りやすさに拍車がかかります。

 

スポーツ界ではインスリンは「筋肉を増やすドーピング薬」!?

インスリンは実はスポーツ界ではドーピングの一種としても知られています。糖をエネルギーとして効率よく使わせる効果があるので、筋肉を大きくする目的で使用できますね。

ちなみに本当にインスリンが必要な場合は、診断書があれば大丈夫だワン。

 

インスリンは「太る薬」じゃなくて「生きるためのホルモン」

インスリンを使うと体重が増えることはあります。しかし、それは「太った」ではなく「健康な体に戻った」可能性もある。あと、カロリーの摂りすぎがあると、体重はやっぱり増えるのはインスリンを注射していない方と一緒ですね。

結局カギになるのは、インスリンの量と、カロリーや糖質のバランスです。

 

インスリンはあくまで「食べた分に合わせて使う」薬。カロリーが過剰でなければ、インスリンを使っていても体重は増えにくいです。

 

このテーマは昔からずっと議論され続けていますが、

インスリンは、生きるために必要なホルモンですから、軽々しくやめたり減らしたりアドバイスするのは危険ですね。

大切なのは、「噂に振り回されず、疑問があれば、医療者と一緒に考えていく姿勢」かなと思います。

 

医療者も頭ごなしに否定するわけではなく、なぜその考えに至ったのかを理解せねばなりませんね。