週一回インスリンのアウィクリ、在宅診療の救世主?

週一回のインスリンが発売されたって騒いでたけど、実際どうだワンか?

いくつか注意する点はあるけど、とてもいいインスリンだと思うよ。

どういった方に適したインスリンだワンかね?

今のところ、「インスリンの管理が自分では難しい」という方に使い勝手がいい感じかな。一方で、細かなインスリンの調整が必要をしたい、という方にはあまり向いてなさそうな気がする。

 

週1回インスリン、アウィクリ®が使えるようになりました

アウィクリ(一般名:インスリンイコデク)は、2025年1月に上市した週1回投与の新しい基礎インスリン製剤です。

インスリンの構造を並び替えたり、脂肪酸というしっぽを付けたりして1週間効くような感じになってるよ。

週一回の注射薬は、もともとGLP-1受容体作動薬などの注射薬が開発されていましたが、インスリンでも週1回の投与が可能なものが開発されました。

 

単位数はどうやって設定する?

現在の持効型インスリン(トレシーバやランタス、グラルギンなど)を7倍した量を1週間に1回投与します。ダイヤルが10ずつになるので、端数は切り捨てになります。

例えば、毎日トレシーバを8単位使っている患者さんが アウィクリに切り替えるケースを考えてみましょう。 1週間分をまとめて打つので、 8単位 × 7日 = 56単位が理論的な必要量となります。

そのため、少なめの50単位、あるいは60単位が投与量になります。

 

ただし、これまでのインスリン製剤よりも血中のインスリン濃度が安定するには結構時間がかかります。そのため、1型糖尿病の方や、インスリン分泌が低下している方では最初だけ1.5倍の量を投与します。

先ほどの例であれば、 初回のみ80~90単位を投与して血中濃度を一定範囲に乗せるわけですね。

 

在宅医療におけるポテンシャルを感じるインスリン

上記の通り、投与量はわりと大味でどんぶり勘定という感じです。そのため、現状は血糖マネジメントがしっかり必要な若い方よりも、毎日注射をすることが困難な方に向いているかなという印象です。

例えば、認知症がすすみ自分で注射ができなくなってしまった糖尿病の方。

これまでは、週1~2回の訪問看護では対応できないことが多く、悩みのタネでした。しかしながら、週1回のインスリンに切り替えれば、週1回の訪問看護でも割と安全に血糖マネジメントがはかれます。

保険収載後1年間は2週間のごとの診察が必要ですが、訪問診療医が患者宅を訪れる頻度は2週間ごとというケースが多いためこれも問題なしです。

ただし治験のデータでは、従来のインスリン(グラルギン)よりも若干、低血糖の頻度が増加するとの報告があるため低血糖には今まで以上に注意が必要です。

今後はGLP-1受容体作動薬との混合製剤が発売?

基礎インスリンの選択肢が増え、しかも注射の負担が 毎日から週1回になるというのは画期的ですよね。治療を継続することは糖尿病の合併症を防ぐのに一番大切ですから、投薬の回数が減ることはとても良いことです。

さて、発売元のノボノルディスクファーマでは、GLP-1受容体作動薬オゼンピックとの混合製剤が開発され、現在治験がすすめられています。現在はゾルトファイ配合注という配合注射がありますが、今後は週1回が当たり前になっていくのかなと思います。