糖尿病医の糖尿病日記

糖尿病(MODY3)の糖尿病医が糖尿病の記事を書きます.

肥満症治療薬「ゼップバウンド」が承認了承。世はGLP-1RA戦国時代?

肥満症治療薬「ウゴービ」に引き続き、「ゼップバウンド」が承認了承されたよ。

かっこいい名前だワン。どんな薬だワンか?

GLP-1/GIP受容体作動薬という種類の薬になるよ。もともと2型糖尿病の治療薬として発売されているんだけど、自然に食欲を抑える効果があって、肥満症の治療薬としても注目されているよ。

そうなんだワンか。

Zepbound Price Cut in Half for Lowest Doses

見た目は完全にマンジャロと一緒だワン。

そうだよ。今回発売になる「ゼップバウンド」は、「マンジャロ」と全く同じ成分だよ。

同じ薬なのに名前だけ違うんだワンか?

そうそう。同じ成分だけど「治療の対象となる病気」が違うと、名前が変わることは結構よくあるんだ。

 

「インスリングラルギン」などのインスリン製剤や、「トルリシティ」「マンジャロ」などのGLP-1受容体作動薬を販売しているイーライリリー社は、「ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド」が承認了承されたと報道しました(以下、ゼップバウンド=チルゼパチドとして記載します。)]

ゼップバウンドは、すでに2023年4月から発売されている「マンジャロ」という薬と全く同じ成分です。「GLP-1/GIP受容体作動薬」という薬の一種で、その高い痩せ効果が注目されていました。

すでに「ウゴービ」というGLP-1受容体作動薬が肥満症治療薬として上市していますが、ゼップバウンドはGLP-1に加えてGIPというホルモン受容体にも作用するため、デュアルアゴニストとよばれより高い減量効果を示しています。

 

GLP-1受容体作動薬の作用の詳しい仕組みについては、以下の記事をご参照ください。

 

糖尿病ではない肥満の方を対象としたゼップバウンドの効能や安全性を示した治験としてSURMOUNT-3試験があり、論文として公開されています。

SURMOUNT-3試験は、肥満または過体重の成人を対象に、チルゼパチドの体重減少効果を評価した第III相二重盲検プラセボ対照試験である。この試験では、12週間の強化生活習慣介入後に5%以上の体重減少を達成した参加者を対象に、チルゼパチドの有効性と安全性を検討した。

方法

ボディマス指数(BMI)が30 kg/m²以上、または27 kg/m²以上で少なくとも1つの肥満関連合併症(糖尿病を除く)を有する成人が対象となった。全参加者は、まず12週間の強化生活習慣介入を受け、5%以上の体重減少を達成した579名が無作為化され、チルゼパチド群(10 mgまたは15 mg)またはプラセボ群に1:1の割合で割り付けられた。その後、週1回の投与を72週間行い、主要評価項目として、無作為化時から72週時点での体重変化率と、5%以上の体重減少を達成した参加者の割合を評価した。

結果

72週時点での体重変化率の平均は、チルゼパチド群で−18.4%(標準誤差0.7)、プラセボ群で2.5%の増加であった。また、5%以上の体重減少を達成した参加者の割合は、チルゼパチド群で91.0%、プラセボ群で3.5%であった。これらの結果は、チルゼパチドが生活習慣介入後の体重減少維持およびさらなる減量に有効であることを示している。

(ChatGPTによる要約)

青色:ゼップバウンド投与による体重減少率
灰色:プラセボ群

Tirzepatide after intensive lifestyle intervention in adults with overweight or obesity: the SURMOUNT-3 phase 3 trial | Nature Medicineより引用

す、、、すごい。。ゼップバウンドを投与して72週間後(1年半後)には平均で-21.1%の体重減少。。対して、プラセボ群(ゼップバウンドを投与していない生活習慣改善群)は逆に+3.2%になっているね。

参加者の平均体重が101.9kgなので、平均20kg以上落ちてることになるワンね.

これまでも抗肥満薬としていくつかの薬剤が上市されていましたが、いずれも副作用などの懸念から長期間投与の安全性が担保されていませんでした。ゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬は、吐き気や便秘・下痢などの副作用が出るものの、投与量で調整が可能であり、個人的には治験の脱落率の少なさが特徴的かなと思います。

 

また、さいきんは日本人を対象としたSURMOUNT-Jという治験の結果が発表されております。

方法

SURMOUNT-Jの試験参加者は、肥満(BMI 30以上)または高度肥満で、肥満に関連する健康障害を有する日本人成人である。参加者は、プラセボ群、チルゼパチド10mg群、チルゼパチド15mg群の3群に無作為に割り付けられた。投与は週1回皮下投与で行われ、4週間ごとに2.5mgずつ増量し、最終的に10mgまたは15mgの維持量に達した後、72週まで継続された。主要評価項目は、ベースラインから72週時点での体重の平均変化率と、5%以上の体重減少を達成した参加者の割合である。

結果

72週時点での体重の平均変化率は、プラセボ群で1.7%減少、チルゼパチド10mg群で17.8%減少、チルゼパチド15mg群で22.7%減少となり、チルゼパチド投与群はプラセボ群に比べて有意な体重減少を示した。また、5%以上の体重減少を達成した割合は、プラセボ群で20.0%、チルゼパチド10mg群で94.4%、チルゼパチド15mg群で96.1%であり、チルゼパチド投与群で高い達成率が認められた。

(ChatGPTによる要約)

チルゼパチド10mg群で体重は17.8%減少、チルゼパチド15mg群で22.7%減少と日本人でも同様の結果であったようです

ただし、2024年12月現在は、イーライリリー社からのプレスリリースのみで論文としては発表されていません日本イーライリリー社 チルゼパチド、肥満症のある日本人を対象とした試験においてプラセボ群に対する有意な体重減少効果を示す

 

ゼップバウンド、楽しみです!
なお通常、から薬価収載を経て発売となりますので、日本での発売は2025年秋~冬頃になると思われます。