糖尿病医の糖尿病日記

糖尿病(MODY3)の糖尿病医が糖尿病の記事を書きます.

糖尿病専門医試験を受けました

2021年度の糖尿病専門医試験を受験しました。

なんとか無事合格に至りましたので、受験を考えている先生方の参考になればと思い,申請~受験後合格までの感想を記載していきます。

 

f:id:OdaQ_DM:20220115004806j:plain

 

糖尿病専門医とは

内科あるいは小児科で規定の研修を終えそれぞれの学会の認定医や専門医の資格を持った医師が、糖尿病に関する専門的な研修を更に3年以上受けて、経験症例のレポートを提出し、専門医試験(筆記と面接)に合格すると「糖尿病専門医」の資格を取得することができます。この3年間の研修期間中には学会の認定した施設において、指導医のもとで患者さんの診療、指導や教育に携わり、必要とされる様々な診療経験を積みます。

「糖尿病専門医」は資格取得後も最新の知識や技能を維持・獲得するための研鑽を継続し、5年ごとに一定の審査を経て資格を更新する必要があります。更新のためには、糖尿病に関連する学会に参加し、教育講演を受講し、また、担当する糖尿病患者についての診療内容や指導歴の報告が必要とされます。

このような認定を受けている糖尿病専門医は、専門的知識をもとに質の高い糖尿病の診療や患者さんへの指導を自ら行うだけでなく、糖尿病診療チームのリーダーとしても院内で活動するとともに、糖尿病を専門としないかかりつけ医と連携して患者さんの診療や診療に関する助言を行うことで、地域の糖尿病診療においても重要な役割を担っています。

糖尿病専門医とは|一般社団法人日本糖尿病学会

この糖尿病専門医を取得するための試験,わりと難関と言われています.

というのも,まず症例レポートの作成が大変です.それに加え試験がなかなか曲者です.いわゆる糖尿病だけではなくて,それに関連した病態(肥満や脂質異常症はもちろん,歯周病や栄養学)についても出題され非常に出題範囲が広い試験です.

 

 

専門医資格は必要なのか

専門医資格の要不要については色々と議論があるところですが,筆者の場合は「自分のやりたいこと」を考えると必要かなと思い取得に至りました.最終的に臨床遺伝専門医の取得を考えていたので,そもそも土台となる専門医資格が必要だったのです.

また,実際に試験に合格してから2~3ヶ月程度しか経過してありませんが,これ一つ資格があるだけでも,就活や自身の活動(書き物など)がスムーズになった実感があります.

 

症例報告は可能な限り早めに準備

僕が専門医試験関連で一番時間を要したのは,症例報告のレポート作成です.

これはもっと早くから準備をしておけばよかった.

 

症例報告についての詳細は,学会HPでダウンロードが可能です.

2021年のリンクを貼っておきます.

www.jds.or.jp

必要な症例の条件については結構細かく決められています.そのため,条件に合うような症例を事前に目星をつけておく必要があります.

レポートに使用できそうな症例を担当したさい,あらかじめExcelなどにリスト化しておくだけでも後の労力が違うと感じました。

 

自分が受験した年度(2021年度)の場合は、

  • 入院で担当,かつ詳細な記入が必要な「症例記録」 10症例
  • 外来症例の簡潔にまとめたレポート 30症例

の記入が必要でした.

 

なお,レポートのチェックは割と厳しめで,割と修正を求められることがあるようです.

症例記録に関するルール(例:記載すべき社会生活歴の項目や、診断の根拠となる検査の記載をしているか、治療方法が妥当か、もし標準治療と異なる治療を行っている場合はその根拠を書くなど)を遵守するように意識したところ,幸い修正は求められませんでした.

センセイによっては,かなり細かい点を指摘され,修正依頼をされることもあったようです.あるいは症例の差し替えを要求された場合もあるようでした.

 

なお,提出期限の直前からレポートを作り始めるツワモノもいましたが、思ったよりも時間がかかる作業でしたので,早めに作り始めるに越したことはないと思います.

 

なお,症例報告は受験資格の可否を決めるものと考えられ、試験自体の採点には影響しないと思われます。

 

 

 

試験勉強で感じたこと

肝心の試験勉強です.

試験範囲が広大なため,勉強時間は長めにとるのがよいと感じました.

僕は8月のお盆明けくらいから勉強を始めました.もっと早くから勉強を始めているセンセイもいたんですが,僕の場合はこれくらいで丁度良かったです.長すぎると病みます.

試験1ヶ月前くらいから始めているセンセイもいましたが,かなりきつそうでした.

特に夫婦共働きで子供がいたりする場合,勉強時間の確保が難しく,事前によく調整が必要と感じました.

 

それと,過去に問われた問題の情報はなるべく収集しておきました.

自分は勤務先の先輩から教えてもらいましたが,5chのスレッドもわりと有用と感じました.試験後あたりの日付を辿ると結構書いてくれています.

anago.2ch.sc

 

なお,出題範囲に関しては,例年8月頃,学会HPに記載されます.
例年変わりないのですが,今年も掲載されていたので一応,確認しておきました.

f:id:OdaQ_DM:20220114215908p:plain

第32回(2021年度)糖尿病専門医受験予定の皆さまへ|一般社団法人日本糖尿病学会

 

例年の出題範囲は以下のとおりです.

①糖尿病専門医研修ガイドブック (最新版)
②学会誌の過去3年間の特集,委員会報告.

知り合いのセンセイが事務局に電話確認したところ,「過去3年間」とは,試験3年前の1月からを指すようです.具体的には,例えば2021年の試験だったら,2018年1月~2021年最新号までが範囲です.

 

①のガイドブックは舐めるような通読が必要です.一文一文,細かいところ全部出ます.暗記ペンを使うセンセイもいましたが,ほぼすべての文章が埋まってしまいます(笑)

違う章でも同じような話題がかぶっていることもあり,微妙に書いていることが違うこともあるので注意と感じました.

前半の生理や脂質の項目はかなりツラく苦しく感じたのですが,ここからも結構出ていました.具体的な数字や診断基準,<表>などはかなり出題頻度が高いです.

 

 

②の特集や委員会報告は主に臨床の話題から出題されることが多く,マウスや細胞などの基礎的部分は出題されない傾向があると感じました.こちらも表や数字が選択問題でもパラパラ出てくることが多く感じました.

バックナンバーはここから収集が可能です.ID, パスワードは学会からのメールで通知が来ていたと思います.

www.jstage.jst.go.jp

 

余談ですが,論述問題を含め,上記の範囲に記載のないテーマからも出題されることが多いです.最近のトピックスから出題される傾向があるようですが・・・

2021年の試験もそのような感じで大いに混乱したのですが,試験後に調べたところ,学会のシンポジウムで話題になっていた話題でした.

なので,余裕があるならば試験年の学会総会のシンポジウムのテーマくらいは目を通しても良いかもしれません.

 

病むほど勉強したつらい試験でしたが,合格の喜びもひとしおでした.

臨床現場では得られない「教科書的な知識」は,なんだかんだ言って診療のクオリティ上昇につながると感じます.今後,受験を予定されている先生方の参考になれば幸いです.

 

 

 

ほかにも参考になる体験記を貼っておきます.↓

note.com

free-doctor-life.com