糖尿病医の糖尿病日記

糖尿病(MODY3)の糖尿病医が糖尿病の記事を書きます.

糖尿病薬の名前の由来 注射編①

薬の名前には由来があるの,ご存知でしたか?

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現在,日本の保険で使われる医療用医薬品は約1万4千種類もあります.
薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和3年11月1日適用)|厚生労働省)

医薬品には,いわゆる成分名としての「一般名」と,製薬会社がつける「商品名」とがあります.

開発してから特許が切れるまで,製薬会社がつけた「商品名」が使用されます.

いっぽう,発売から時間がたち,特許が切れた薬剤は後発品(いわゆるジェネリック)として「一般名」が使用されます.

 

で,「商品名」は,製薬メーカーが自由につけられますから,なかなか個性的な名前が使用されます.

今回は,糖尿病の治療に使用される注射薬についてまとめました.

 

調べ方:メーカーの医薬品インタビューフォームを参照し,「名称の由来」から引用しました.

 

 

 

ノボラピッド®

ノボラピッド®は超速効型インスリンのひとつです.

一般名はインスリンアスパルト.

ノボ・ノルディスクファーマ社が販売する超速効型インスリンなので,ボ+ラピッドでノボラピッド®でわかりやすいですね.

 

ヒューマログ®

ヒューマログ®は,イーライリリー社から発売されている超速効型インスリンです.

一般名はインスリンリスプロ.

世界で最初に開発されたヒトインスリンのアナログ製剤なので,Human Insulin Analog をもじってヒューマログ®という名前になりました.

 

「アナログ製剤」ってなんでしょうか.

もともと,インスリンは効くまでの時間がやや長い「レギュラーインスリン」というものが使用されており,注射後30分程度,効果が出るまで食事を待つ必要がありました.

その理由として,インスリンは六量体というカタマリ状を作ってしまう事が考えられていました.

そこで,遺伝子組み換え技術により,アミノ酸の並びを変えることで六量体の問題を解決し作用時間を早めることができました.

このように,遺伝子組み換え技術を用いてつくられる製剤を「アナログ製剤」といいます.

現在使用されている注射薬のほとんどがアナログ製剤です.

(六量体についての詳しい説明は「インスリンアスパルト」をどうぞ.)

 

アピドラ®

サノフィ社が販売しているアピドラ®は超速効型インスリンのひとつです.

一般名はインスリングルリジン.

 

こちらは超速効型を意味するRapidをならべかえて,

Apid + R  でアピドラ®です.

アナグラムってやつですね.おもしろい.

 

 

 

インスリンアスパルト

 

こちらは最近発売になったインスリンアスパルト.ノボラピッド®のジェネリックです.

インスリンは,通常,6つのインスリン分子がくっついて「6量体」を形成しており,いわゆるピザのような形になっています.

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インスリン注射してから血糖が下がるまで より引用

体内に入った後,細かく切り離された後に効果を発揮しますので,効くまでに時間がかかるのがネックでした.

そこで研究を重ね,インスリン同士がひっつく部分(インスリンのB鎖28番目のプロリン)をアスパラギン酸(Asp)に組み替えて,6量体が形成されないようにしたのが超速効型インスリンです.

なので,アスパラギン酸を組み入れたインスリンなので,インスリンアスパルトという名前になりました.

 

 

 

インスリンリスプロ

インスリンリスプロはヒューマログ®のジェネリックです.

インスリンアスパルトと同様に,6量体を形成しないように「リシン」と「プロリン」を入れ替えたので,頭文字をとってリスプロという名前になりました.

 

ふだん使っている薬はありましたか?いろいろな名前の由来があって,おもしろいですよね.開発の経緯がわかるのも楽しいです.次回に続きます.