糖尿病医の糖尿病日記

糖尿病(MODY3)の糖尿病医が糖尿病の記事を書きます.

GLP-1受容体作動薬が正式に減量薬として使用可能になる?

2021年6月,アメリカでGLP-1受容体作動薬のセマグルチド(商品名 Wegovy®)が米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けました.

 

f:id:OdaQ_DM:20210709112926j:plain

 

肥満症治療薬として販売予定のWegovy®

FDA Approves New Drug Treatment for Chronic Weight Management, First Since 2014 | FDA

f:id:OdaQ_DM:20210709125627j:plain

アメリカで販売予定のGLP-1受容体作動薬、Wegovy®.見た目はまんまオゼンピック®ですね. 違うのは色だけです.

でも,容量が全然違います.

 

オゼンピック®はセマグルチドを0.25mg~1.0mg含んでいるのに対して,

Wegovy®は2.4mgと現在の常用量の4倍程度です.

 

セマグルチド は,2型糖尿病の治療薬,GLP-1受容体作動薬のひとつです.現在,オゼンピック®,リベルサス®が使用可能です.

自前のインスリン分泌を増加させる効果や,食欲を抑える効果が認められており,とくに減量効果は大きいことが証明されています.

しかし,現時点では「2型糖尿病」に対してのみの使用が認められており,減量(ダイエット)目的での使用はできません.

そんな状況のなか,アメリカではひと足早く「肥満症」に対しての使用が承認されました.

 

糖尿病ではない肥満者でも,高い減量効果が証明された

これまで,2型糖尿病の方に対するGLP-1受容体作動薬の有効性は多数の報告がありますが,糖尿病ではない肥満の方にも安全に使えるのかは不明でした.

そこで,糖尿病ではない肥満の方への使用試験が行われ,その結果がNEJM誌に投稿されました.(N Engl J Med 2021; 384:989-1002)

参加者の平均年齢は46歳,平均体重105.3kg,BMI 37.9 kg/m².43.7%が前糖尿病でしたが,糖尿病と診断されている方は除外されました.

(N Engl J Med 2021; 384:989-1002)から引用

図:投与開始から68週後までの体重変動(%)
青…投薬群,灰...対照群(投薬なし)

f:id:OdaQ_DM:20210709122144p:plain

 

 投与群(セマグルチド 2.4mg/週), 非投与群で体重の推移を比較したところ,
非投薬群の-2.4%に対し,投薬群では-14.9%もの減量効果が認められました(95%CI:-13.4~-11.5, P<0.001)

気になる副作用に関しては,やはり吐き気や下痢などの胃腸障害が最も多く,非投薬群が47.9%に対し投薬群で74.2%でした.ほかにも肝胆道系障害(0.2% vs 1.3%)も多く認められたようです.

 
 

 

通常,承認後から半年から1年で販売開始になります.
ただ,日本での常用量とは大きく異なっているのと,昨今ではGLP-1受容体作動薬の不適切使用が問題になっていることを考えると,日本で使えるようになるのは,しばらく先になるのではないかと思われます.