糖尿病医の糖尿病日記

糖尿病(MODY3)の糖尿病医が糖尿病の記事を書きます.

糖尿病のカミングアウトとアウティングについて思うこと

あなたは周りの人に,自分の病気のことを伝えていますか?

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糖尿病患者は,カミングアウトをするか迷っている

先日,たまたま1型糖尿病の方と話す機会がありました.

自分が糖尿病であることを伝えているかどうか?の話題になり,彼女もぼくも,カミングアウトをすること自体は抵抗ないけど,いざ他の人がぼくのことを喋るのはちょっといやだなーと思っていたことを話しました.

例えば,ぼくの病気のことを知っている医療スタッフが,同じく糖尿病で悩んでいる患者さんに向けて(励まそうとして),ぼくも糖尿病であることを話すっていう状況です.

そんな内容をツイートしたら,けっこうな反響をいただきました.

同じような悩みを抱えている方は多いようでした.その中のコメントで,これは「アウティング」とよばれることを知りました.

   

カミングアウトとアウティングの違い

カミングアウトとは,本人(この場合は糖尿病のぼく)が周りに暴露する行動,

アウティングとは,本人の了解を得ずに、他の人が秘密をいいふらす行動のことです.

 

この「アウティング」ということば,もともとはLGBTQの方の状況をとりまく言葉で使われることが多いようです.

www.tokyo-np.co.jp

心を許した相手に伝えた自分の情報を暴露され,心傷のすえ自殺に至った悲しい事件でした.

 

この「カミングアウト」,「アウティング」ということば,糖尿病に変換して考えたら,とても他人事ではない問題と思います.

 

 

カミングアウトは,いい影響も悪い影響もある

自分の病気を周りの人に伝えると,いい影響を与えることがあります.

具体的には,

  • 隠し事をせず正面から伝えることで,病気を受け入れる自己肯定感につながる.
  • インスリンを隠れて注射しなくてもよくなる.
  • シックデイや低血糖で体調が悪い場合,助けてもらえる.
  • 糖尿病の正しい情報を周りに知ってもらうことができる.間違った理解をしていたと気づいてもらえることがある.

などがあげられます.

発症してから永く付き合わなければいけないので,周りの協力があれば当然コントロールもしやすくなります.また,「インスリンを毎回隠れて注射していたけど,周りに話してからは気が楽になった」という声もありました.

 

いっぽうで,カミングアウトには悪い影響もあります.

  • 糖尿病であることで受ける差別や偏見
  • 保険やローンが組めない.仕事に影響が出る
  • アウティング.

上2つはスティグマとよばれ,大きな問題になっています.昔に比べて多少マシはなりましたが,糖尿病に関する世間の風当たりは強いです.

いまだに糖尿病は贅沢病と誤解されるときもあります.

(↓こちらの記事もご参照下さい)

 

病気は最大の個人情報.安易なアウティングは控えるべき

僕はこんな経験があります.
病院の食堂でごはんを食べていたら,たまたま通りがかった患者の方から

「センセイは糖尿病ってききましたよー.ごはんとか減らさなくて大丈夫なんですか?」と言われ,

 

あれ・・・?
僕この方に糖尿病のこと言ったっけ??

 

あとで聞いてみたら,外来の看護師さんから聞いたみたいです.

せっかく勇気を出して「この人には話せる!」と思って話したことが,気づいたときには皆に広まっちゃうと,いやになっちゃいますよね.

   

 

糖尿病の身としては,確かにまわりに知ってもらいたい時もあるんですが,それで過干渉されたり,ありもしないことを言われるのもちょっといやなのです.
糖尿病の方を支援する側も,それが個人情報ということを意識しながら,お互いを尊重していくべきと思います.

 

今回の記事の参考資料:

  1. 「周りの人に自分の病気を知ってもらうこと」|1型糖尿病語り場 本音リング|糖尿病情報サイトDMTOWN
  2. 「スティグマ」日本糖尿病協会

 

2023/6/10 若干修正(リンク切れなど)