記載:2020年8月31日
この論文を一言でまとめると:
スティグマとは糖尿病の方に対する「差別」「偏見」という意味.特に1型糖尿病の方や女性,インスリンを使用中の方が多く感じており,糖尿病治療における,今後の大きな課題である.
Stigma in People With Type 1 or Type 2 Diabetes
1型糖尿病,2型糖尿病の人とスティグマについて
www.ncbi.nlm.nih.gov PMID: 28144043
○背景:
- これまで糖尿病の病態や治療法について,多くの研究がなされ,実際に糖尿病治療は大きく進化を遂げている.
- しかし,糖尿病患者自身の生活の質(Quolity of Life)についての研究については不十分である.
- 糖尿病患者に対して,世間の理解は十分とはいえず,病気であることを隠したり,実際に差別を受け,嫌な思いをすることがある.
- 今回はその実態についてアンケートを行った.
○方法:
- 1型糖尿病および2型糖尿病12,000人を対象とし,アンケート形式で調査した.
- (回答者には謝礼として5ドル,抽選で200ドルのアマゾンギフトカードが進呈された)
- スティグマに関する質問票を用い,病態・治療ごとに分析を行った.
○結果:
- 5,422人(1型 1,572人,2型 3,850人)から回答を受けた.
- 1型糖尿病患者の76%が何らかの差別を感じていると回答した.
- 2型糖尿病患者は52%であったが,インスリン頻回使用患者で高かった(61%)
(文献 図1より引用)
「スティグマを感じている」と答えた患者の割合.
A:1型糖尿病患者,女性,インスリン使用中の2型糖尿病患者でスティグマを感じる割合が多かった.
B:HbA1cごとの割合.HbA1cが高いほどスティグマを感じる割合が多かった
C:BMIごとの割合.BMIが高いほどスティグマを感じる割合が多かった.
D:自己血糖測定スコア(高いほどコントロールがよい).コントロールが悪いほどスティグマを感じる割合が多かった.
○結論:
- 糖尿病であることで,社会や他人から感じる差別や偏見などをスティグマという.
- 特に1型糖尿病患者,女性,インスリン使用中の患者で,スティグマを感じる頻度が高かった.
- 糖尿病に対する社会の理解は十分とはいえない.
自分は10歳の頃から糖尿病を発症していましたが,当時はスティグマという言葉はなく,「糖尿病=成人病,生活習慣病」と言われていました.友達にからかわれたり,医療保険に入れなかったりと,悲しい思い出が蘇ります.
今後はそんな思いする方がなるべく少なくなるように,自分も発信する側として貢献したいです.